北広島町 移住ガイドブック改訂の設計資料 第一版
一次情報にもとづくペルソナと章構成
移住ガイドブック制作意見交換会 提出資料 / 2026年8月5日
この資料は第一版である。町の移住相談窓口の問合せログと「定住者の声」24件の原本が入れば更新する。英国政府デジタルサービス(GDS)が同種のペルソナを公開した際も「新しいデータが入るごとに発展させ続ける」と明記していた[36] 。完成品ではなく、更新される設計図として読んでほしい。
範囲について。この資料はガイドブックの設計材料に限定している。移住施策全体の計画(数値目標・予算・体制)は町の総合戦略の領分であり、ここでは扱わない。ただし第4章のデータ棚卸しは、ガイドブック以外の施策検討にもそのまま使える形で整理してある。
目次
第1章 現行のペルソナシートに足りないもの
第2章 ペルソナの作り方(前提の共有)
第3章 何をどこから集めたか
第4章 誰が実際に来ているか
第5章 ペルソナ
第6章 それでも選ばれない理由
第7章 ガイドブックの章構成へ
第8章 この資料の限界と、次に必要な一次情報
付録 人物カード5体
出典一覧
第1章 現行のペルソナシートに足りないもの
1-1. まず、これは特別に杜撰な話ではない
ペルソナ手法を使うと称する組織のうち、実際に現地調査を行っているのは5%未満である。Jared Spoolの調査による。
最近、私たちはペルソナを使っていると自称する数十の組織を対象に調査を行った。実際に現地調査を行ってペルソナに反映していた組織は5%に満たなかった。残りの95%は、社内の当て推量だけで記述を作り上げていた。[29]
つまり調査なしでペルソナを書くのは、行政に限らず民間企業でも95%がやっていることだ。 この章は誰かの仕事を責めるためのものではない。作り直しの起点を定めるために、現行シートに何が入っていて何が入っていないかを機械的に確認する。
1-2. 移行の「4つの力」で測る
人が現状から新しい状態へ乗り換えるとき、4つの力が働く[25] 。
押す力
今の状況が抱えている問題。人が探し始めるきっかけになる摩擦・不満・行き詰まりの瞬間
移住の場合: 今の暮らしへの不満
引く力
新しいやり方が持つ引力。自分のために思い描く前進の見通し
移住の場合: 新しい暮らしの魅力
不安
未知への恐れ。「うまくいかなかったらどうしよう。恥をかいたらどうしよう」
移住の場合: 移住して失敗しないか
慣性
すでに知っていて、すでにやっていることが持つ、心地よい惰性
移住の場合: 今のままでいることの楽さ
(英語の原文は巻末の出典[25] に併記した。以下、英語の引用はすべて同じ扱いとする。)
判定式は、押す力 + 引く力 > 不安 + 慣性 のとき乗り換えが起きる。
現行シートをこの4つの力に分けると、こうなる。
押す力
家が狭い / 時間に追われHP残量ゼロ / 公園が混む / 夫が寄り添わない / 社会からの置いてけぼり感
厚い
引く力
広い家 / 職住保育15分圏 / 温かい見守り / 自分の書斎 / 夫婦の余白
厚い
不安と慣性がゼロだと、判定式は必ず成立する。つまりこの人物は必ず移住する。 実在する人間は必ず不安と慣性を持つので、必ず移住する人物像は実在しない。
これは感想ではなく構造の話である。そして実務上の帰結がある。
ガイドブックが動かせるのは不安と慣性だけだ。 押す力は読者の生活の側にあり、引く力は町の実体の側にある。紙で下げられるのは「わからないことへの不安」と「動くことの面倒」だけである。したがって不安と慣性を書いていないペルソナからは、ガイドブックの中身が1行も導けない。
1-3. 書き始める順序が逆になっている
共感図(エンパシーマップ)の2017年改訂版は、記入の順序を明示的に変更した。見えること→言っていること→していること→聞いていること(観察できること)を先に埋め、最後に中心の考えていること・感じていること(観察できないこと)を埋める。
思考と感情は、推測したり推論したりはできるが、観察することは決してできない。
現行シートは「夜、寝顔を見ながら罪悪感でいっぱいになる」「ママ以外の私の場所ってどこ?」という、観察不可能な内面から書き始めている。 感情の解像度は行政資料として異例に高い。ただし出発点が逆である。
1-4. 行動が書かれていない
ペルソナの区別は行動でつけるもので、人口統計でつけるものではない[27] 。
ペルソナ同士の重要な違いは行動によるものであり、人口統計上の属性によるものではない。
現行シートの構成要素は、34歳、世帯年収900万円、東京23区、賃貸2LDK、無印良品、観葉植物、カフェラテ、Voicy、『北欧、暮らしの道具店』、『LEE』。これは属性と嗜好であって行動ではない。
第4章で立てる9つの行動変数に現行シートを当てると(配布された1枚の記載範囲では)、5つが空白になる (地縁の種類、住まいの取得手段、冬季運転の経験、検討段階、移住の契機)。
就業と通勤については、「在宅で仕事する夫」という記述があるため、在宅勤務を示唆する材料はある。ただし示唆であって、移住後にその働き方を続けられるのかという手段の話は書かれていない。 ここは空白ではなく「未確定」である。
意思決定の主導者も、妻の感情だけが描かれ夫は「優しいが解決策ばかり言うIT職」という小道具になっている。移住は世帯の意思決定であり、拒否権を持つ側を描いていないペルソナは意思決定モデルとして機能しない。
1-5. 記述が実データに紐付いていない
これがもっとも重い基準である。
記述のどの部分も実際のデータに結び付けられないなら、それはペルソナではない。創作物であり、重要な設計判断や事業判断の材料に使ってはならないものである。[26]
「創作だ」ではなく「重要な判断に使うべきでないもの だ」という基準である。現行シートには出典の提示がない。
1-6. そして、想定された引く力が実地で反証されている
現行シートは「時間に追われHP残量は常にゼロ」の都市生活から「時間のゆとり」へ、という物語を描いている。
北広島町に実際に移住し、その後町を離れた人の記録がある。町と県の移住者記録にも登場する20代の女性で、2017年3月、22歳で旧芸北町(雲耕)へ移住した。動機は「山の猟師に、憧れていたから」で、地縁はない。移住後は農業法人に勤め、地域の保育士不足を受けて春夏は農業・冬は保育園、さらに地元猟友会に所属して猟に出た。
そして町を離れた。本人が公開のインタビューで理由を語っている。
そんな心の充実とはうらはらに、体には無理がきていて貧血で倒れてしまいます。[18]
転出先は親族の空き家がある江田島市だった。地縁のない土地へ憧れで飛び込み、体調を崩して離れ、地縁のある土地へ移った という構図である。
私は2022年の初め、一身上の都合から北広島町を離れた。[17]
(この事例は出典間で記述が食い違う点が2つある。転出時期はSUUMOタウンの本人エッセイが「2022年初め」、山根木材のインタビューが「2021年3月」。転出先の親族も前者が「曽祖父」、後者が「祖父」と記録している。どちらも本人が語った内容として記事化されているため、断定せず両方を併記する。)
本人の書き分けについて一点付記する。 本人自身のエッセイ[17] では転出理由を「一身上の都合」とし、健康に関する記述は別媒体のインタビュー[18] にのみある。媒体によって語り方を選んでいる可能性があるため、この資料では氏名を記載しない。 ガイドブック本体にこの事例を載せる場合は、本人の許諾を得ることを前提とする。「移住の失敗例」という枠づけは本人のものではない。
雪国に移住した当事者の記録にも同じ方向のものがある。
降り続くと1〜2時間の除雪を日に3回程やる時もある[47]
そして家にいる時間が長い私が大体除雪を担当する事になる[47]
夫も最低限しか除雪はやらない[47]
「田舎に行けばゆとりができる」という引く力は、少なくともこれらの事例では成立していない。 現行シートの中心的な訴求が、実在の移住者によって反証されている。ここが最も直さなければならない箇所である。
1-7. 現行シートの良い点
感情描写の解像度は、行政資料として異例に高い。「夫は優しく家事も手伝うが、悩みを言うと『断捨離しよう』と解決策ばかり言ってくる」という記述は、実在の夫婦の摩擦として具体的である。素材として捨てる必要はない。 第5章のペルソナの押す力の部分に、この解像度を移植する。
第2章 ペルソナの作り方(前提の共有)
作り直しの手順を先に示す。以降の章はこの手順に沿っている。
2-1. ペルソナには3種類ある
ニールセン・ノーマン・グループの分類[30] 。
調査前の仮ペルソナについてニールセン・ノーマン・グループはこう書いている。
調査前の仮ペルソナは調査に基づいていないため、利用者の実像を誤って伝えることが多く、チームの思い込みが増幅されるだけの反響室になりかねない。[30]
現行シートは調査前の仮ペルソナである。 手法として存在するものであり、着手時の道具としては正しい。ただしガイドブック全体の設計根拠にする段階のものではない。この資料が目指すのは聞き取りに基づくペルソナである。
なお「ユーザー調査は5人でよい」という通説があるが、あれはユーザビリティテスト専用の話である[32] 。同じ記事が定量調査には20人以上必要と明記している。探索的なインタビューに5人ルールを持ち込むのは誤用である。
2-2. 手順
手順 2について具体的に書いておく。「北広島町に住んでみたいですか」は意見であり未来の話なので、答えを信じてはいけない[45] 。聞くべきは実際に取った行動である。下見に来たか、住宅ローンの相談をしたか、空き家バンクを見たか、家族に話したか。
またインタビューの前に、こちらの仮説を全部書き出しておく[44] 。「忙しい生活を送っていますか?」のような、答えを先取りする質問を避けるためである。現行シートの「時間に追われHP残量は常にゼロ」は、この種の誘導質問の答えの形をしている。
手順 10について。更新頻度と成果の自己評価には対応関係がある。156名のUX専門家調査で、四半期以上の頻度で更新するチームは5.5/7、1〜4年ごとが4.5/7、5年以上または未更新が3.9/7だった[31] 。更新しないペルソナは使えなくなる。 この資料も更新条件を第8章に書く。
2-3. 県内に前例がある
総務省の「効果的移住定住推進施策事例集」(2021年3月)に、広島県福山市の事例が載っている[23] 。
社会増減のターニングポイントやライフスタイルに応じて9つのペルソナ(政策ターゲット)を設定。ペルソナの満足度を高める施策を展開。
9つは市の施策全体の政策ターゲットの数であり、そのうち「移住」に対応するペルソナが2つである。 その1つが「移住希望の既婚男性(備後圏域出身、関西圏在住) 」で、出身地=地縁をペルソナの定義に明示的に含めている。
つまり福山市は、施策の領域ごとにペルソナを分け、移住についてはさらに2つに割っている。「ペルソナは1体作るもの」ではないという実例が、県内にある。
同じ事例集は、施策を6つの段階に分けている。
①移住関心層への広報 → ②情報収集 → ③仕事 → ④住まい・生活 → ⑤心理面 → ⑥決断
この段階は、現行ガイドブックの「移住へのステップ Step.1〜6」とほぼ対応している。 現行の構成は国のフレームと整合しており、捨てる必要はない。第7章でこれを土台に使う。
第3章 何をどこから集めたか
3-1. 集めた一次情報
3-2. 取れなかったもの(先に書く)
町の「定住者の声」24件の本文。 一覧ページと個別PDFの全件が、2026年8月5日時点で HTTP 404を返した[48] 。広島県のサイトからのリンクは生きているが、飛び先が消えている。
2015年以降の転入元・転出先の市町村別内訳。 町が公表している最新の内訳は平成17〜22年のもので、15年以上前である。政府統計の総合窓口(e-Stat)、国勢調査の市町村別表、広島県統計課、地域経済分析システム(RESAS)をすべて試したが町単位に到達できなかった。
移住相談窓口の問合せログ。 町のみが保有する。
乳幼児(0〜5歳)の医療費助成の存否。条例で確認できるのは6〜18歳のみで[11] 、2回の調査でも0〜5歳を対象とする制度を確認できなかった。制度がないのか、公開されていないだけなのかが判別できない。町のこども家庭課への確認が必要。
(決着済み)学校給食費は町の条例で原則有償と定められ、特別の理由がある場合に減額・免除ができる構造である。無償化の規定はない。
(決着済み)アメダス八幡の平年値を取得した。年間降雪605cm・最深積雪120cm(1991〜2020年平年値)[7] 。
3-3. この収集方法の構造的な弱点
Web上の情報だけを集めると、いちばん件数の多い層が抜け落ちる。
移住記を書くのは、移住そのものが人生の物語になる人である。遠方から来た人、自営業、作り手、地域おこし協力隊。広島市から車40分の町へ引っ越して勤め先を変えずに働き続けている人は、それを「移住」と呼ばず記事にも書かない。生活圏内の住み替えだからだ。
事実で裏付けられる。県の公的移住メディアHIROBIROに載っている北広島町の事例は4件で、職業は酒蔵・画家・木版画作家・ベーグル店[16] 。全員が自営である。会社員は1人も載っていない。
したがって、この資料が最も自信を持てない部分は、最も件数が多い層についてである。 第5章の主ペルソナにその弱点を明記した。
第4章 誰が実際に来ているか
4-1. 出発地の分布
町と広島県が公開している移住者インタビュー25件(県のイジュー広島に24件、町サイトに1件)のうち、出発地が判明した22件[15] 。
大阪府・京都市・ 沖縄県・島根県江津市
各1(計4)
広島県内が13件で59%、うち広島市だけで45%。 移住先は吉木・志路原・大朝・本地・戸谷・阿坂・中祖・春木・雲耕・荒神原・雄鹿原と、行政区単位で広く散っている。
町の人口ビジョンの転入内訳(平成17〜22年の5年間累計)も同じ方向を示す[1] 。
広島市が2位の安芸高田市の約7倍である。 ただし同じ表で広島市に対しては転出超過(転入888人・転出911人) であることも併記しておく。出発地として最も多いことと、差し引きで増えていることは別の話である。
4-2. この町は通勤者を受け入れる側である
人口ビジョンにもう一つの数字がある[1] 。
通勤等に伴う人口移動では、全体で流入が流出を上回り、昼夜間人口比率は107.2%となっています。流入・流出ともに広島市との関わりが強く、広島市からは2,121人の流入、1,151人の流出となっています。
これは平成22年(2010年)国勢調査 の通勤の数字である(住民票の移動ではない。人口ビジョンp.27およびp.40)[1] 。広島市に住んで北広島町へ働きに来ている人が2,121人。逆方向が1,151人。流入が流出の約1.8倍である。
この数字は最新値ではない。 15年以上前の国勢調査に基づくため、ガイドブックに載せる前に最新の通勤流動を町で確認する必要がある。加えて、人口約1万6千人の山間の町が通勤の純受入側であるという点は直感に反するので、会議では原典の該当ページを示せるようにしておく。
町内に雇用がある。実際の事業所を挙げる。
工業団地が6箇所あるとされ(この数は民間の移住情報サイト経由で、町の公的資料では確認できていない)、町と商工会が求人サイト「北広島町企業ガイドWEB」を運営している。サテライトオフィスの貸出オフィス4室は2025年12月時点で満室である [37] 。
これが重要な理由は、移住検討者の最大の不安がここにあるからだ。
内閣官房の意識調査(令和2年9月、東京圏 n=1,552)で、移住を検討する際の不安の上位3つ[22] 。この設問を含む調査としてはこれが最新である (同種の後継調査は令和5年3月版・令和7年2月版・令和8年3月版と続いているが、対象が20代の若年層に絞られており、不安要素を同じ形で尋ねた設問は確認できなかった。詳細は巻末の[22] の注記)。
1位と3位が仕事と賃金である。 「田舎には仕事がない」という思い込みに対して、この町は数字で応えられる立場にある。
4-3. 群馬・静岡とは同じ試合をしていない
現行のペルソナシートの余白に、手書きで「ぐんま」「しずおか」と書かれていた。競合の想定と読める。この2県の移住施策を確認した[43] 。
この群の商品は「東京の仕事を維持したまま住み替える」である。 北広島町の場合、東京から広島駅まで新幹線で約4時間(のぞみの平均所要3時間54分。臨時を含む全列車が4時間以内)[49] 、そこから町まで高速バスで約1時間[40] 。乗り継ぎを含めて片道5時間前後になる。 現行ガイドブックのアクセスマップも同じ構成で、広島→新大阪1時間30分、新大阪→東京2時間30分、広島駅→北広島町 高速バス1時間と区間ごとに記載している[14] 。新幹線通勤という商品では戦えない。
さらに制度上の事実がある。令和8年度版(2026年4月7日更新)の広島県の移住支援金の対象市町一覧に、北広島町は含まれていない。 対象は18市町(広島市、呉市、竹原市、三原市、尾道市、福山市、府中市、三次市、庄原市、東広島市、廿日市市、府中町、海田町、熊野町、坂町、安芸太田町、世羅町、神石高原町)で[3] 、隣接する安芸太田町は対象である。
町が独自に交付するのはUターン奨励金で、対象は「過去に北広島町に住民票があった16歳以上39歳以下」に限られ、単身5万円・世帯10万円・小学生以下の子1人あたり5万円加算である[4] 。
つまり東京23区から縁のない世帯が移住しても、「移住したこと」を理由とする給付(国の移住支援金・町のUターン奨励金)はどちらも受け取れない。 受け取れるのは、空き家活用定住促進事業補助(事業費の1/3・上限100万円、49歳以下)[5] のように出発地を問わない事業補助 に限られる。この違いは制度の性格の違いであり、ガイドブックでは書き分ける必要がある。
第2期・第3期の総合戦略本文を全文確認したところ、「東京23区」という語は一度も出てこない。「東京圏」は第1章の趣旨説明に国全体の政策文脈として1箇所ずつあるだけである。KPIは「社会動態の増加」(令和4年▲71人→令和8年30人以上)と「定住施策捕捉分による定住者数」(令和4年度50人→令和8年度のべ120人)で、出発地を問うものではない [2] 。
制度にも数値目標にも総合戦略本文にも、東京23区を主対象に置く根拠はない。
支援額は県内で見ても小さい
同時に、比べる相手を県内に変えても町の支援額は小さい。移住検討者は隣接する市町と並べて見るので、この事実は先に把握しておく必要がある。
移住そのものへの奨励金で見ると、庄原市の子育て世帯は最大で数百万円規模になりうるのに対し、北広島町は世帯10万円である。 桁が2つ違う。
ただしこれは「金額で競え」という話ではない。 町は国の移住支援金の対象外で、独自の奨励金も元町民に限っている。金額で勝てない以上、ガイドブックが担うべき役割は「金額以外の判断材料を、他より具体的に出すこと」になる。 具体的には、地区別の積雪、通勤の実時間、二次救急の所在、空き家の実価格帯である。第6章はその一覧である。
(県内他市町の金額は令和8年度時点で確認したものだが、年度の記載が確認できなかった制度もある。会議で数字を使う場合は各市町の最新の要綱で再確認する。)
4-4. 一方で、東京からの移住は実在する
東京都からの移住者は3件確認できる[15] 。加えて現行ガイドブックには渡邉ニコルさん(平成21年、東京都→芸北、異文化コンサルタント、夫婦・子2人)が掲載されている[14] 。島田愛子さん(東京都→大朝、木版画作家)もいる[16] 。
否定されるのは「東京から」ではなく「勤務先を変えずに」である。 遠方から移住して定着した事例は、確認できた範囲で全員が自営・専門職・地域おこし協力隊のいずれかだった。
4-5. 就業の確保手段が、地縁より効いている可能性
内容まで確認できた12件の就業形態[16] [17] [18] [19] [20] [14] 。
転出した1件を除くと、定着した11件はすべて「仕事を自分で作った」か「町が仕事と役割を用意した」かのどちらかである。 例外の1件(農業法人へ現地就職した第1章の事例)は、そのいずれでもなく、町を離れている。
地縁については、満足度に効くことが全国調査で確認できる。パーソル総合研究所の調査(2021年3月、移住経験者n=7,866)の「地域生活の幸せ実感」[21] 。
上位2つが地縁のある型である。 ただしこの指標は5段階評価で、最上位と最下位の差は0.16点(5点満点に対して3.2%)しかない。 Iターンは中位であり、最下位は多拠点居住型である。差が小さいことを踏まえると、この調査から言えるのは「地縁のある移住が上位に来る傾向がある」までで、「縁がなければ不幸になる」ではない。 「地縁がないと成立しない」とは言えない。 実際、地縁なしで移住が成立した事例が確認できている(熊本市出身の地域おこし協力隊[20] 、広島市出身で友人の誘いから空き家を取得した方[19] )。ただし「成立」までであり「定着」は確認していない。 協力隊の任期後の進路は町の公表資料に見当たらなかった(第5章5-4)。
したがって行動変数として重いのは、地縁の有無より就業の確保手段である。
第5章 ペルソナ
5-1. 9つの行動変数
5-2. P1(主ペルソナ) 広島市圏からの生活圏内移動
この町がいちばん多く受け入れている層。
状況文
そのとき 子どもが増えて広島市内の賃貸が手狭になり、市内で家を買うには予算が届かないと分かったとき、
したいこと 今の勤め先を辞めずに、車で通える範囲で広い家に住みたい。
そうすれば 収入と職歴を切らさずに、子どもに庭のある家で育つ時間を渡せる。
移住前
4つの力
押す力
市内の住宅価格と広さの折り合いがつかない。保育園と職場と家の距離
根拠: —
引く力
車40〜55分で通勤圏(40分は現行ガイドブック[14] 、55分は経路検索の二次情報)。公示地価は住宅地21,600〜24,300円/㎡[9] 。空き家バンクに40件(売買10〜600万円、賃貸月2万円台。2026年8月時点)[39] 。令和8年9月から全園児の保育料・副食費が無償化 [10] 。町内に雇用がある(昼夜間人口比率107.2%。平成22年国勢調査)[1]
慣性
今の家から動かなくても暮らせている。引っ越しと手続きが面倒。地区を選ぶ判断材料がない
根拠: [21]
移住後
この層に対する町の実データ
積雪は地区で大きく違う。同じ町内で約2倍の差がある (いずれも気象庁の1991〜2020年平年値)[6] [7] 。
「北広島町は雪が多い」と一括りにすると、雪の少ない地区に住む選択肢が消える。 ただし千代田地区には気象庁の観測点がなく、積雪の公式数値が存在しない (町内の観測点は大朝399m・王泊525m・都志見400m・八幡774mの4か所で、いずれも千代田地区ではない)。ガイドブックに地区別の数字を載せるなら、この欠落をどう埋めるかを町と決める必要がある。
町内に二次救急が3病院ある (北広島病院、大朝ふるさと病院、千代田中央病院)[8] 。北広島病院には産婦人科と小児科があり、一般30床+地域包括ケア25床。
生活費の実額例: 家賃+駐車場35,000円/月、水道8,000円/月、ガス8,000円/月、ガソリン15,000円/月[14] (2016年時点。要更新)
デマンド交通ホープタクシーが町内全域+隣接3市町で一乗車500円[40] 。高速バス千代田IC〜広島バスセンター1,330円[40] 。
この層の確度についての注記
構造データは厚いが、本人の言葉が1件しかない。
確認できたのは後藤祐美子さん(広島市出身、地縁なし、民宿を営む友人の誘いで数回訪問、空き家バンクで物件購入、平日は広島市内で会社員として勤務し週末に北広島町でカフェを経営 )[19] 。
地域の方からすると何者かわからず、壁を作られた時もありました[19]
"私が私になれる場所"があれば、自由に自分らしく生きることができると思う[19]
この層は出発地の分布で45%を占めるのに、質的データが1件である。 理由は第3章で述べたとおり、この層は移住記を書かないからだ。町の窓口ログと「定住者の声」24件の原本が、この空白を埋める唯一の材料である。
5-3. P2(副) 自営・作り手型
事例がもっとも厚い層(8件)。
状況文
そのとき 自分の仕事を自分の手で立てられると分かり、都市の家賃と時間がその邪魔になっていると気づいたとき、
したいこと 仕事場と住まいを兼ねられる古い家を、手を入れられる条件で手に入れたい。
そうすれば 生き方と仕事の中身を一致させられる。
実例 (7件のうち6件が大朝・豊平に集積。残る1件は芸北 )
本人の言葉。
移住するなら、敢えて不便な場所が良いと思っていました。自然が厳しく、生活にメリハリのある環境[16] (島田愛子)
もっと田舎でもやっていける[16] (森田歩武)
4つの力
押す力
都市の家賃と時間が制作・営業の足を引っ張る
引く力
空き家改修補助(事業費の1/3・上限100万円、49歳以下)[5] 。空き家バンク40件[39] 。創業支援補助(上限30万円)[38]
不安
客が来るのか。改修費が見積を超えないか(「見た目以上に構造部・水回りの劣化が進んでいる」「工事額が倍以上に膨らむケース」 という記録がある)。収入が読めない
注意すべき制度の噛み合わせ : 空き家活用定住促進事業補助は「3親等以内の親族から取得した者は除く」[5] 。一方でUターン奨励金は地縁のある人向けである[4] 。親族の家に入る人は、住宅改修の補助を受けられない。 この層の一部が制度の隙間に落ちる。
5-4. P3(副) 公的枠・遠方型
地縁がなくても成立している層。ただし町が仕事と役割を用意している。
状況文
そのとき 自分の専門を、規模の大きな組織ではなく手の届く範囲で使いたいと思ったとき、
したいこと 役割と任期がはっきりした仕事で入りたい。
そうすれば 生活の基盤を確保したまま、その土地で自分の居場所を作れる。
実例
松嶋良さん (30代、熊本県熊本市出身、地縁なし、2020年着任、任期3年)。加計高等学校芸北分校の女子下宿「みなこ館」の立ち上げ・運営、ハウスマスター、高校魅力化プロジェクト。町は受験者数が定員割れから定員超過へ転換した と記載している(2023年3月)[20] 。
山岸瑞樹さん(2023年4月〜、生物多様性の保全・調査・普及啓発)、北野真弓さん(元東京のフリーライター)[37] 。
この事例の扱いには注意が必要 : 令和6年12月策定の第3期総合戦略は、同じ加計高校芸北分校について「生徒数の減少から存続の危機にある」と記載している[2] 。時期が近いのに評価が逆であり、指標の違い(受験者数と在籍者数)か一時的な回復かを判別できない。成功事例として単独で使わず、両方の時点と出典を併記する。
4つの力
引く力
任期と役割が明確。住まいの手配がある。サテライトオフィスの貸出4室は2025年12月時点で満室 [37]
不安
任期後に何をするのか。地縁ゼロで受け入れられるか。単身で冬を越せるか
この層の最大の不安に対して、町は答えを持っていない。 地域おこし協力隊の任期終了後の定住は、全国で同一市町村55.7%(4,477人/8,034人、2019〜2023年度終了者)、近隣自治体を含めて約68.9%とされる(総務省調査の集計値。二次情報経由で取得し、総務省の原典に到達できていない。会議で使う前に原典を確認する )。近隣を含めても約3割が離れている。 北広島町の任期後の進路を示すデータは見つからなかった。ここは町が持っているはずの情報である。
5-5. N1(対象外ペルソナ) 勤務先を変えずに東京から移り住む世帯
この町が応えられない相手を明示する。
Cooperの分類にある対象外ペルソナは、対象にしないと決めた層を書くことで設計のブレを防ぐためのものである[34] 。現行のペルソナシートの人物像は、ここに該当する。
応えられない根拠。
否定するのは「東京から」ではなく「勤務先を変えずに」である。 東京都からの移住は3件実在する[15] 。自営・在宅勤務で完結・地縁のいずれかがあれば成立する。ガイドブックはこの条件を明示すべきで、条件を書かずに東京の会社員世帯を呼ぶと、群馬・静岡に構造的に負ける試合の資料になる。
応えられない相手を書くことは、応える相手への誠実さである。
5-6. S1(受け入れ側ペルソナ) 受け入れ側の集落住民
移住は片側の意思決定ではない。Cooperの受け入れ側ペルソナは、自分では使わないが影響を受ける人を指す[34] 。
根拠となる一次情報
地域の方からすると何者かわからず、壁を作られた時もありました[19]
人との距離感が近くて監視されている感じが嫌でした。むしろストレスに感じていましたよ。ところが半年、1年を過ごすうちに、相手のことを知ることが増え、安心感が大きくなってきました。今では近所付き合いが楽しくて、挨拶したりされたりする生活っていいなと思っています[46]
行事やイベントが多い地域だったり、草刈りや家の修繕が必要だったりすると、やることは多いかもしれません[14] (現行ガイドブック)
「温かい見守り」と「監視されている感じ」は、同じ現象の別の時期である可能性が高い。 現行のペルソナシートは前者だけを書いた。時間軸を入れないと、この論点は扱えない。
現行ガイドブックには地元住民の声が2件掲載されている(森田隆司さん・大朝の建設業、今田さん・吉木行政区長)[14] 。この設計は正しいので引き継ぐ。
第6章 それでも選ばれない理由
ガイドブックが動かせるのは不安と慣性だけである (第1章)。この章は、実際に挙がっている不安を頻度順に並べ、それぞれに町の実データを対応させる。この対応表が、ガイドブックの中身そのものになる。
6-1. 全国調査で挙がっている不安の順位
内閣官房調査(令和2年9月、東京圏 n=1,552)[22] 。
6-2. 不安と、町の実データの対応表
仕事と賃金
生活利便性・コスト
冬道運転と雪
医療
教育と進学
住まい
地区の付き合い
夫婦の温度差
1位・3位 仕事と賃金
2位 生活利便性
冬道運転と雪
医療
教育と進学
住まい
地区の付き合い
夫婦の温度差
親の介護・帰省
6-3. この章の設計原則
不安を書いて、そこで終わらせない。 現行ガイドブックの弱点は、デメリットに触れていないことではなく(触れている)、触れたあとに数字がないことである。
「雪が凄い」で止めると不安は残る。
「大朝(標高399m)は年間降雪319cm・最深積雪50cm、八幡(標高774m)は年間降雪605cm・最深積雪120cm」と観測点ごとに書けば、住む地区を選ぶ判断ができる。 (千代田地区は観測点がないため、公式数値を出せない。ここは町と埋め方を決める箇所である。)
不安は消せない。判断できる形に変えるだけである。
第7章 ガイドブックの章構成へ
7-1. 現行ガイドブックの評価
引き継ぐべきもの : Step.1〜6の骨格、予備知識その1〜5の枠組み、生活費の月次実額モデル、教育データの全国比較(図書館蔵書・体力調査)、地元住民の声、方言のページ。
直すべきもの : 10年分のデータ更新(学校数は統廃合前のまま)、デメリットに数字を入れる、読者を切る、補助金の実額を書く。
7-2. 章構成案
総務省の6段階[23] を骨格に、現行のStep.1〜6を対応させ、第6章の対応表を中身として流し込む。
7-3. 検討段階で分けるという選択肢
島根県はガイドブックを2冊に分けている[41] 。
「暮らしまね」 = 初期の関心層向け。「興味を持ったばかりの方へ」と明示。支援制度・体験メニュー・相談窓口。
「行こうかな、しまね」 = 真剣検討層向け。19市町村ごとの住宅・就職・子育て・高齢者医療を詳述。
行動変数V9(検討段階)で読者を割るという設計である。 16ページ1冊で全段階に応えるのは無理があるので、1冊のままなら前半を関心層、後半を検討層に明確に分ける構成が現実的である。
7-4. 差別化になるのはどこか
「デメリットを書くこと」自体は、すでに前例がある。 調べた範囲で次の3つが確認できた。
北広島町の現行ガイドブック(2016年) が「きたひろ暮らしの予備知識 その1〜5」で雪・行事・車の必須を書いている[14]
長崎市の公式サイト が「地方移住のデメリット」として収入減、求人数と職種の限定、公共交通の運賃の高さと本数の少なさ、車が必須になることによる維持費増、商業施設と娯楽施設の不足を明記している
長崎県が運営する「ながさき移住ナビ」 も、企業数と求人数の少なさ、交通の不便さ、車の維持費を明記している
したがって「公的資料でデメリットを書くのは前例がない」という主張は成立しない。 ただし長崎の2例は市および県という広域の案内であり、北広島町の規模の町が地区単位で書いている事例は確認できていない。
差別化になるのは「デメリットを書くこと」ではなく、次の3つである。
数字で答えること。 「雪が凄い!」ではなく「大朝は年間降雪319cm、八幡は605cm、千代田には観測点がない」と書く。長崎の2例も項目の列挙までで、数字は入っていない。
地区で分けること。 町内で積雪が約2倍違い、生活利便も地区で差がある。町の規模だからこそ地区単位で書ける。
読者を切ること。 誰に向けた資料かを明示し、応えられない相手も書く(第5章の対象外ペルソナ)。
第8章 この資料の限界と、次に必要な一次情報
8-1. 限界
主ペルソナ(P1)の質的データが1件しかない。 出発地の分布では45%を占めるのに、本人の言葉は後藤祐美子さん1件[19] 。構造データは厚いが、この層が何を不安に思っているかは推定に留まる。
Web上の情報だけでは、最も件数の多い層が構造的に抜け落ちる (第3章)。
町の「定住者の声」24件が全件リンク切れ(HTTP 404)で読めなかった [48] 。ウェブアーカイブもこの環境からは取得できなかった。
最新の転入元内訳が公表されていない。 町の公表値は平成17〜22年のもの[1] 。昼夜間人口比率107.2%も平成22年国勢調査の値である。
就業形態の分布に掲載の偏りがある (自営が実態より多く見える)。
窓口に来たが移住しなかった人の記録がない。 掲載事例には原理的に含まれない。
未確認の事実が残っている: 乳幼児(0〜5歳)の医療費助成の存否、学校給食費の負担、統廃合後の正確な学校数、神楽団の団体数(51/63/約70で不一致)、町から周産期母子医療センターまでの所要時間、地域おこし協力隊の任期後の進路。
8-2. 町にお願いしたい一次情報(2つ)
(1) 移住相談窓口の問合せログ
これは町だけが持っている、最も価値の高い一次情報である。
窓口には「移住記を書かない人」も来ている。そして移住しなかった人も来ている。 何を聞かれ、何がネックで消えたのかが記録されているなら、それが第6章の対応表の頻度順を決める。現在の頻度順は全国調査の代用値である。
個人が特定されない形(相談内容の分類と件数)で構わない。
(2) 「定住者の声」24件の原本
一覧ページと個別PDFの全件が、2026年8月5日時点で HTTP 404を返した[48] 。広島県のサイトからのリンクは生きているのに、飛び先が消えている。町は原本を持っているはずである。 (この資料の作成後に復旧している場合はこの指摘を取り下げる。 )
この24件には、氏名・出発地・移住先地区までは外部から判明している。足りないのは、地縁・就業形態・きっかけ・不安・本人の言葉である。 これが入ればペルソナはn=25以上の実データに基づくものになり、聞き取りに基づくペルソナ[30] の水準に届く。
あわせて、リンクが切れている事実そのものを報告する。 移住検討者の不安の1位は「働き口が見つからない」(39.4%)であり、先輩移住者がどう仕事を得たかの情報はそこに直接効く。それが24件あるのに、今は誰も読めない。
8-3. あるとさらに良いもの
直近の移住世帯数・人数の実績(公表されている最新値は平成18年度のものだった)
空き家バンクの成約件数と成約までの期間
地域おこし協力隊の任期後の進路(全国平均では約3割が離れている)
統廃合後の学校数と、今後の統廃合計画の有無
8-4. 更新の条件
四半期以上の頻度で見直すペルソナは、そうでないものより実際に役立っている[31] 。この資料の更新条件を先に決めておく。
英国政府デジタルサービスは、同種のペルソナを公開したときにこう書いていた[36] 。
新しいデータが入ってくるたびにこのペルソナを発展させ続け、それがどう変化していくかをブログで発信していく。
この資料も同じ性質のものである。第一版であり、完成品ではない。
付録 人物カード5体
なぜ「詳細な人物像」を今の順序で作るのか
この資料は役所版ペルソナシートを「名前・見た目・嗜好が先に決まり、行動データが後付け」だと診断した (文献調査で整理した「ダメなペルソナの兆候」の3番目)。
だから詳細な人物像を作ること自体が、その批判に自分から当たりに行く行為に見える。
そうならない条件が2つある。
条件1: 順序。
標準手順のStep 5はこう書いている。
ゴール・行動パターン・環境・態度を先に固め、名前や見た目は最後に最小限だけ加える。
行動(9つの行動変数)・4つの力・状況文は第5章で先に固めた。
したがって今が「最後に名前と見た目を加える」段階であり、順序としては正しい位置にいる。
条件2: 紐付け。
キム・グッドウィン(Kim Goodwin)の基準は「詳しく書くな」ではない。
記述のどの部分も実際のデータに結び付けられないなら、それはペルソナではない。創作物であり、重要な設計判断や事業判断の材料に使ってはならないものである。[26]
問われているのは記述が実データにたどれるか であって、記述が細かいかではない。
そしてチャップマンとミルハムの反証不可能性批判への対処として、標準手順のStep 8はこう定めている。
ペルソナ記述の一文ごとに「どのインタビューの発言・行動に基づくか」の出典台帳を残す。
この付録は出典台帳を、あとから付けるものではなく本体の構造そのものにしている。
各項目の右端に由来記号を置き、カード末尾に台帳を持つ。
役所版との差はここに出る。役所版は詳しすぎたのではなく、詳しさに出典がなかった。
由来記号(全カード共通)
【設】 の役割は、読者像を1人の人間として想像できるようにすることだけである。
【設】 の項目を根拠に誌面を決めた瞬間、この資料は役所版と同じものになる。
会議で「この年収はどこから出たのか」と問われたら、【設】 と答える。
読み方の注意
[役所] は、意見交換会で配布された役所版ペルソナシート(第1章で扱ったもの)の文字起こしを指す。 数字の出典番号([1] 〜[49])とは別の記法であり、リンクにしていない。
5つの肖像はすべて実在の人物ではない。生成AIによる架空の画像である。
P1(主ペルソナ) 中村 亮平さん・佳奈さん夫婦
架空の人物である。 画像は生成AIによる。実在の人物ではない。
この町がいちばん多く受け入れている層。
出発地の分布で広島市が10件・45%を占める[15] 。
この層は移住記を書かないので、質的データが1件しかない (本文5-2)。
したがってこのカードは5体のうち最も【設】 の比率が高い。そのこと自体が、町の窓口ログを取るべき理由である。
基本情報
役所版との比較のために項目立てを揃えてある。
役所版は世帯年収900万円・東京23区・無印良品・Voicyだった[役所]。
同じ形式で書いても、由来記号が付くだけで資料としての性質が変わる。 これが会議で見せたい一点である。
9つの行動変数(本文5-2と一致)
平日の1日(移住後)
この動線から誌面の要件が2つ出る。
1つは通勤時間を「40分」ではなく「起点・終点・経路つきで」書くこと (現行ガイドブックは千代田ICから広島市中心部まで40分、経路検索では55分。起点が違うので両方載せるしかない )。
もう1つは保育園・小学校・職場・幹線道路の位置関係を地区別の地図で出すこと である。
冬の1日(移住1年目・1月)
八幡(標高774m)の1月の降雪は201cm・最深積雪99cm、大朝(標高399m)は125cm・39cmである[6] [7] 。
千代田地区には気象庁の観測点がなく、公式数値が存在しない (本文5-2)。
つまりこの夫婦が住む予定の地区の積雪を、この資料は数字で答えられない。
これは人物像の欠陥ではなく資料の欠陥であり、このカードを会議に出すと、その欠落が人の生活として目に見える形になる。
町と埋め方を決める箇所である(本文6-3)。
4つの力
押す力
市内の賃貸2LDKに4人は手狭。市内で家を買うと予算が届かない。保育園・職場・家が三角形に離れている
【合】 本文5-2の押す力。役所版の感情描写の解像度をここに移植した(本文1-7)
引く力
転職せずに通える(車40〜55分)[14] 。公示地価は住宅地21,600〜24,300円/㎡[9] 。空き家バンク40件・売買10万〜600万円・賃貸月2万円台[39] 。令和8年9月から全園児の保育料・副食費が無償化 [10] 。町内に雇用がある(昼夜間人口比率107.2%、広島市から2,121人が通勤流入。平成22年国勢調査)[1]
【実】
不安役所版はゼロ
①雪道を運転したことがない。②千代田地区がどれだけ降るのか誰も数字で答えない。③長男が夜に熱を出したらどこへ行くのか。④長女が高校に上がる10年後に町の高校が残っているのか。⑤地区の付き合いがどれくらいか、行政区ごとに違うと聞くが調べる方法がない。⑥冬の光熱費とガソリン代がいくら増えるのか
【実】 本文5-2の不安[22] [47] [19] 、6-2の各行
慣性役所版はゼロ
今の家でも一応4人で暮らせている。引っ越しと手続きが面倒。地区を選ぶ判断材料がないので、決めようとするたびに保留になる
【実】 本文5-2[21]
不安⑥への答えは町が持っている。
生活費の実額例(家賃+駐車場35,000円/月、水道8,000円/月、ガス8,000円/月、ガソリン15,000円/月)は現行ガイドブックにある[14] 。
ただし2016年の数字なので、そのまま載せられない。更新が必要である。
意思決定(誰が拒否権を持つか)
役所版の最大の構造的欠陥は、夫が「優しいが解決策ばかり言うIT職」という小道具になっていたことである (本文1-4)。
移住は世帯の意思決定であり、拒否権を持つ側を描いていないペルソナは意思決定モデルとして機能しない。
したがってガイドブックは、牽引者ではなく拒否権者に向けたページを持たなければならない。
現行ガイドブックのStep.3「家族の合意は?」が既にこの論点を扱っている[14] 。
現行のペルソナシートには無かった論点が、10年前のガイドブックにはあった (本文6-2)。
状況文(本文5-2から転記)
そのとき 子どもが増えて広島市内の賃貸が手狭になり、市内で家を買うには予算が届かないと分かったとき、
したいこと 今の勤め先を辞めずに、車で通える範囲で広い家に住みたい。
そうすれば 収入と職歴を切らさずに、子どもに庭のある家で育つ時間を渡せる。
情報行動
この行は誌面ではなく町の運用に効く。
P1は最も多い層でありながら、最も観測されていない層である。
ガイドブックが打てる手(不安と慣性にだけ効く)
ガイドブックが動かせるのは不安と慣性だけである(本文1-2)。
出典台帳
P2(副ペルソナ) 大西 陽一さん・千尋さん夫婦
架空の人物である。 画像は生成AIによる。実在の人物ではない。
事例がもっとも厚い層(8件)。
本文5-3の実例表7件のうち6件が大朝・豊平に集積し、残る1件は芸北である [16] [14] [15] 。
この集積そのものが、この層の入りやすさを示している。
基本情報
9つの行動変数(本文5-3と一致)
この人物が踏む制度の落とし穴(このカード最大の産物)
空き家活用定住促進事業補助は「3親等以内の親族から取得した者は除く」 [5] 。
一方でUターン奨励金は「過去に北広島町に住民票があった16歳以上39歳以下」に限られる[4] 。
大西さん夫婦はどちらも受け取れない可能性が高い。
この1点を町に確認する必要がある。
確認事項は「空き家活用定住促進事業補助の『3親等以内の親族』に姻族を含むか」である。
含むなら、この層のうち配偶者の親族の家に入る人は住宅改修の補助を受けられない。
本文5-3が「この層の一部が制度の隙間に落ちる」と書いた箇所の、具体的な当てはめである。
4つの力
押す力
都市の家賃と時間が制作・営業の足を引っ張る。勤め人として作るものを自分で決められない
【実】 本文5-3
引く力
空き家改修補助(事業費の1/3・上限100万円、49歳以下)[5] 。空き家バンク40件[39] 。創業支援補助(上限30万円)[38] 。同じ型の先行者が大朝・豊平に8件いる [16] [14]
【実】
不安役所版はゼロ
①客が来るのか。②改修費が見積を超えないか(「見た目以上に構造部・水回りの劣化が進んでいる」「工事額が倍以上に膨らむケース」という記録がある )。③収入が読めない。④補助が使えるのかどうか自分では判定できない。⑤子2人の転校
【実】 本文5-3、6-2の住まいの行
慣性役所版はゼロ
今の勤め先でも一応やれている。物件の状態を見極める手間。祖父母の家の権利関係を親族間で整理する面倒
【合】 本文5-3の慣性+親族の家屋という地縁から導出
状況文(本文5-3から転記)
そのとき 自分の仕事を自分の手で立てられると分かり、都市の家賃と時間がその邪魔になっていると気づいたとき、
したいこと 仕事場と住まいを兼ねられる古い家を、手を入れられる条件で手に入れたい。
そうすれば 生き方と仕事の中身を一致させられる。
実例の本人の言葉[16] 。
移住するなら、敢えて不便な場所が良いと思っていました。自然が厳しく、生活にメリハリのある環境(島田愛子さん)
もっと田舎でもやっていける(森田歩武さん)
情報行動
P1と正反対である。
P2は発信するから見つけやすく、だから事例が8件も集まった。
事例の厚さは実際の人数の多さではなく、発信量の多さを反映している可能性がある。
本文3-3が書いた収集方法の構造的な弱点が、ここに出ている。
ガイドブックが打てる手
出典台帳
P3(副ペルソナ) 岡田 まどかさん
架空の人物である。 画像は生成AIによる。実在の人物ではない。
地縁がなくても成立している層。ただし町が仕事と役割を用意している。
基本情報
9つの行動変数(本文5-4と一致)
この層だけ、意思決定に配偶者が関与しない。
したがってガイドブックの「家族の合意」ページはこの層には効かない。誌面の役割が層ごとに違うという実例である。
冬の生活(このカードの核心)
芸北地区にはアメダス八幡がある(北広島町東八幡原、海抜774m)[7] 。
年間降雪の深さ合計605cm、年間最深積雪120cm、1月の降雪201cm・最深積雪99cm (気象庁1991〜2020年平年値)[6] [7] 。
大朝(399m)の319cm/50cmと約2倍の差がある。
単身で、雪道の運転経験がなく、除雪を代わってくれる人がいない。
北海道へ移住した当事者の記録がこの構造を裏づける[47] 。
降り続くと1〜2時間の除雪を日に3回程やる時もある[47]
そして家にいる時間が長い私が大体除雪を担当する事になる[47]
この2つの引用は、除雪が世帯内の誰かに偏る話として記録されている。
単身者の場合、偏る先が本人しかない。
本文6-2は「除雪が誰の仕事になるかは、移住前に決めておく論点である」と書いた。
単身のP3には決める相手がいないので、この論点は「町営住宅の除雪はどこまで町がやるのか」という制度の問いに変わる。
これは資料に書いていない。町に確認する事項として追加する。
4つの力
押す力
都市の組織で自分の仕事の手触りが薄い
【実】 本文5-4
引く力
任期と役割が明確。住まいの手配がある。サテライトオフィスの貸出4室は2025年12月時点で満室 [37]
【実】
不安役所版はゼロ
①任期後に何をするのか。 ②地縁ゼロで受け入れられるか。③単身で冬を越せるか。④町営住宅の除雪は誰がやるのか。⑤3年で成果を出せと言われるが評価の基準がない
【実】 本文5-4+積雪データ[6] [7] から導出
慣性役所版はゼロ
今の仕事を辞める決断の重さ。大阪の友人関係を手放すこと
【実】 本文5-4+【設】
不安①に町は答えを持っていない(そのまま書く)
地域おこし協力隊の任期終了後の定住は、全国で同一市町村55.7%(4,477人/8,034人、2019〜2023年度終了者)、近隣自治体を含めて約68.9%とされる。
この数値は総務省調査の集計値を二次情報経由で取得したもので、原典に到達できていない。会議で使う前に原典を確認する (本文5-4)。
近隣を含めても約3割が離れている。
北広島町の任期後の進路を示すデータは見つからなかった。
さらに構造的な問題がある。
任期後に町で起業する導線としてサテライトオフィスがあるが、貸出4室は2025年12月時点で満室である [37] 。
引く力として数えた満室が、任期後の受け皿としては空きがないという意味になる。
同じ事実が、時点によって引く力にも不安にもなる。
事例の扱いに関する注意(本文5-4から引き継ぐ)
町は加計高等学校芸北分校について、協力隊の活動報告で受験者数が定員割れから定員超過へ転換した と記載している(2023年3月)[20] 。
一方、令和6年12月策定の第3期総合戦略は同じ分校を「生徒数の減少から存続の危機にある」 と記載している[2] 。
時期が近いのに評価が逆であり、指標の違い(受験者数と在籍者数)か一時的な回復かを判別できない。
成功事例として単独で使わず、両方の時点と出典を併記する。
状況文(本文5-4から転記)
そのとき 自分の専門を、規模の大きな組織ではなく手の届く範囲で使いたいと思ったとき、
したいこと 役割と任期がはっきりした仕事で入りたい。
そうすれば 生活の基盤を確保したまま、その土地で自分の居場所を作れる。
情報行動
この層に対して、ガイドブックは移住を決めさせる道具ではない。
着任後の生活を支える道具であり、離れさせないための道具である。
誌面の目的が層ごとに違うという、いちばんはっきりした例である。
ガイドブックが打てる手
出典台帳
N1(対象外ペルソナ) 佐々木 美咲さん
架空の人物である。 画像は生成AIによる。実在の人物ではない。
この町が応えられない相手を明示する。
アラン・クーパー(Alan Cooper)の分類にある対象外ペルソナは、対象にしないと決めた層を書くことで設計のブレを防ぐためのものである[34] 。
このカードだけ、氏名を引き継ぐ
このカードの人物像は、役所版ペルソナシートの佐々木美咲さんをそのまま引き継ぐ [役所]。
新しく作らない。理由は3つある。
本文5-5が「現行のペルソナシートの人物像は、ここに該当する」と判定している。 別人を作ると判定の対象が消える。
本文1-7で「感情描写の解像度は行政資料として異例に高い。素材として捨てる必要はない」と書いた。 引き継ぐと言った以上、引き継ぐ。
役所版を否定するのではなく、足りない4項目(不安・慣性・行動変数・制度の当てはめ)を足すと何が見えるかを示すのが、この資料の主張である。
役所版の記載は改変しない。以下の表で「役所版にある」と書いた行は文字起こし[役所]の内容である。
ただし基本情報表は原本の逐語、4つの力の押す力・引く力の2行は原本の3〜4文を要約したものである。 逐語が必要な場面では、配布された原本にあたる。
基本情報(役所版の記載+追加分)
9つの行動変数を当てると5つが空白になる
役所版に9変数を当てると5つが空白になる (配布された1枚の記載範囲では。本文1-4)。
この人物が対象外になる根拠
距離そのものが商品として成立しない。 群馬・静岡が新幹線通勤を訴求できるのに対し、この町には対応する手段がない[43] 。
4つの力(役所版に不安と慣性を足す)
押す力
家が狭くて子を静かにさせなければならない。時間に追われる。公園が混む。夫が寄り添わない。社会からの置いてけぼり感
役所版にある[役所]。厚い
引く力
広い家。職住保育15分圏。温かい見守り。自分の書斎。夫婦の余白
役所版にある[役所]。厚い
不安役所版はゼロ。ここを足す
①夫の在宅勤務が5年後も続くのか。会社の方針が変わったら片道5時間になる。②長男が来年小学校に上がる。③実家(東京圏)まで片道5時間になる。親が高齢になったときどうするのか。④雪道を運転したことがない。⑤収入が下がったら住宅ローンが組めない
【合】 本文6-1の全国調査の不安順位[22] +距離[49] [40] から導出
慣性役所版はゼロ。ここを足す
東京23区の賃貸2LDKでも一応4人で暮らせている。夫の職場が東京にある。長男の保育園を変える手間。「ぐんま」「しずおか」と書いた時点で、比較して決められない状態にある
【実】 [役所]の手書きメモ+本文1-2
不安と慣性を足すと、この人物は移住しない。
役所版は不安と慣性がゼロだったので、判定式(押す力+引く力>不安+慣性)が必ず成立していた。つまり必ず移住する人物だった。
足すと成立しなくなる。これが対象外ペルソナである理由の全部である。
否定しているのは「東京から」ではない
否定するのは「勤務先を変えずに」である。
東京都からの移住は3件実在する[15] 。
渡邉ニコルさん(平成21年、東京都→芸北、異文化コンサルタント)[14] 、島田愛子さん(東京都→大朝、木版画作家)[16] もいる。
自営・在宅勤務で完結・地縁のいずれかがあれば成立する。
したがって美咲さん夫婦は、夫の勤務形態が確定した瞬間に別のカードへ移る。
このカードは固定された人物ではなく、条件が1つ変わると対象に入る境界線である。
ガイドブックはその条件を明示すべきで、条件を書かずに東京の会社員世帯を呼ぶと、群馬・静岡に構造的に負ける試合の資料になる (本文5-5)。
ガイドブックが打てる手
打たない。これがこのカードの用途である。
ただし1つだけやることがある。
「勤務先を変えずに東京から通えるか」という問いに、最初の数ページで答える。
答えは「通えない」である。
応えられない相手を書くことは、応える相手への誠実さである (本文5-5)。
在宅勤務で完結する人・自営の人・地縁のある人は成立する、という条件を同じ場所に書く。
出典台帳
S1(受け入れ側ペルソナ) 木原 政義さん
架空の人物である。 画像は生成AIによる。実在の人物ではない。
移住は片側の意思決定ではない。
クーパーの受け入れ側ペルソナは、自分では使わないが影響を受ける人を指す[34] 。
移住ガイドブックにおける受け入れ側は、移住してくる側ではなく受け入れる集落の住民である。
基本情報
この人物に4つの力を当てる意味
S1は移住しない。
だから4つの力の対象は「移住するかどうか」ではなく「新しい世帯を受け入れるかどうか」になる。
4つの力
押す力
神楽団の人手が足りない。草刈りの担い手が減った。このままだと行事が続かない
【合】 現行ガイドブックが「行事やイベントが多い地域だったり、草刈りや家の修繕が必要だったり」と書いている[14] 。人口約1万6千人[1]
引く力
若い世帯が入れば行事が続く。子どもの声が地区に戻る
【設】
不安
①どんな人が来るか分からない。②数年で出て行くのではないか(実際に1世帯が出て行った )。③挨拶や当番の作法が違う人にどう言えばいいのか。④言い方を間違えて「監視されている」と受け取られるのが怖い
【実】 移住者側の証言と対応する[19] [46]
慣性
いま3世帯が入っても入らなくても、当面は回る。声をかけて断られるほうが気まずい
【設】
移住者側の証言と、この人物の不安は同じ現象である
「温かい見守り」と「監視されている感じ」は、同じ現象の別の時期である可能性が高い (本文5-6)。
移住者側の言葉[19] 。
地域の方からすると何者かわからず、壁を作られた時もありました
Uターン者の言葉[46] 。
人との距離感が近くて監視されている感じが嫌でした。むしろストレスに感じていましたよ。ところが半年、1年を過ごすうちに、相手のことを知ることが増え、安心感が大きくなってきました。今では近所付き合いが楽しくて、挨拶したりされたりする生活っていいなと思っています
役所版は「近所の人が温かく見守ってくれ、ワンオペの孤独がない環境」と、後者の時期だけを書いた [役所]。
時間軸を入れないとこの論点は扱えない。
この表がガイドブックの誌面になる。
「温かい地域です」と書くのではなく、最初の半年は居心地が悪いと書いて、その先を書く。
状況文(この層のために新しく書く)
そのとき 神楽団の世話役をしていて、若い担い手がこの5年で1人も増えていないと気づいたとき、
したいこと 新しく入ってきた世帯に、負担にならない形で行事の話をしたい。
そうすれば 断られて気まずくなることなく、地区の行事を次の代に渡せる。
本文5-6には状況文がない。このカードで追加した。
追加した理由は、受け入れ側にも「したいこと」があると書かないと、S1が背景の風景になってしまうからである。
ガイドブックが打てる手
移住者向けの誌面と、受け入れ側が読む誌面を分ける。
現行ガイドブックには地元住民の声が2件掲載されている(大朝の建設業の方、吉木行政区長)[14] 。
この設計は正しいので引き継ぐ (本文5-6)。
出典台帳
【実】 : [14] [15] [19] [46] [38] [1] [役所]
【合】 : 家族構成、仕事、地域の役、移住者との接点
【設】 : 氏名、年齢、住まい、引く力、慣性、世帯数
【設】 が多い。 理由は明確で、受け入れ側の一次情報が現行ガイドブックの2件しかないためである。
町の窓口ログでは埋まらない。地区への聞き取りが別に必要である。
5体の比較(1枚で見る)
この表の最下段が、資料としてのいちばん正直な自己申告である。
主ペルソナがもっとも創作に頼っている。 理由は本文3-3と5-2に書いたとおりで、この層が発信しないからである。
町の窓口ログが入るまで、P1は暫定である。
品質チェックリストの自己採点
文献調査で整理した「良いペルソナの条件」8項目で、この付録の5体を採点する。
8項目中7項目が○、1項目が△である。
△は聞き取りを自分で行っていないこと。これは第一版の限界としてすでに本文8-1に書いてある。
役所版は8項目中8項目で不適合だった。ただしこれは「役所が無能」という話ではなく、ジャレッド・スプール(Jared Spool)の調査が示すとおり民間企業でも95%が同じ状態である [29] 。
このカードから出た町への確認事項(新規2件)
第8章8-2「町にお願いしたい一次情報」に加える2件である。
空き家活用定住促進事業補助の「3親等以内の親族」に姻族を含むか [5] 。
含むなら、配偶者の親族の家屋に入る世帯(P2の型)は住宅改修の補助を受けられない。
この型はもっとも事例が厚い層である。
町営住宅の除雪はどこまで町が行うか。
単身の協力隊員(P3の型)には除雪を分担する相手がいない。
八幡の1月の最深積雪は99cm[6] [7] 。
出典一覧
方法論
[25] ボブ・モエスタ / クリス・スピーク「移行の4つの力」(The Four Forces of Progress) https://jobstobedone.org/the-four-forces/
原文: "The push is the problem with the current situation. It's the friction, frustration, or broken moment that makes someone start looking."
原文: "The pull is the magnetism of the new way. It's the vision of progress the customer can imagine for themselves."
原文: "Anxiety is the fear of the unknown: 'What if it doesn't work? What if I look foolish? What about my data?'"(3つ目の問いはソフトウェア利用を念頭に置いたもので、本文の訳では移住に関わる2つを訳出した)
原文: "Habit is the comfortable inertia of what people already know and do."
原文: "Push + Pull > Anxiety + Habit → the switch happens."
注: 乗り換えの時系列(最初の思いつき→受動的な探索→きっかけとなる出来事→能動的な探索→決断)は、複数の二次資料で一致するが一次原典を確認できていない
[26] キム・グッドウィン(Kim Goodwin)「Getting from Research to Personas: Harnessing the Power of Data」 https://articles.centercentre.com/research_to_personas/
原文: "If every aspect of the description can't be tied back to real data, it's not a persona—it's a creative writing project that should not be used for making critical design and business decisions."
注: 元はCooper Journal掲載とされるが、掲載ページ上の表示は2008年5月15日初出・2018年9月27日再掲であり、初出年は確定できていない
[27] キム・グッドウィン(Kim Goodwin)「Perfecting Your Personas」 https://articles.centercentre.com/perfecting_personas/
原文: "The important distinctions among personas are behavioral, not demographic."
原文: "Many product managers and executives are surprised when there isn't a direct correlation between market segments and personas."
注: この2文は原文では別々の段落にある。掲載ページ上の表示は2005年1月13日
[28] チャップマン & ミルハム (2006)「The Persona's New Clothes: Methodological and Practical Arguments Against a Popular Method」Proceedings of the Human Factors and Ergonomics Society 50th Annual Meeting, pp.634-636
原文: "Personas cannot be adequately verified or falsified and therefore have no demonstrable validity."
原文: "It is difficult to determine how many, if any, users are represented by a persona, and thus is difficult to know whether a persona is relevant for intended users."
追跡研究 : Chapman, C. N., Love, E., Milham, R. P., ElRif, P., & Alford, J. L. (2008). "Quantitative Evaluation of Personas as Information." Proceedings of the Human Factors and Ergonomics Society Annual Meeting, 52(16), 1107-1111. 大規模データを用いて、属性を数個より多く積み重ねると、その記述に当てはまる実在の人物がほとんどいなくなること を示した
[29] ジャレッド・スプール(Jared Spool)「Crappy Personas vs. Robust Personas」(2007年11月14日) https://archive.uie.com/brainsparks/2007/11/14/crappy-personas-vs-robust-personas/
原文: "Recently we conducted a study of several dozen organizations who claimed to use personas. Less than 5% actually conducted field research to inform their personas. The remaining 95% just made up the descriptions from internal guesswork."
併せて「Personas Are Not a Document」(2008年1月24日) https://archive.uie.com/brainsparks/2008/01/24/personas-are-not-a-document/ の原文: "Personas are to Persona Descriptions as Vacations are to Souvenir Picture Albums."
[30] ペイジ・ラウブハイマー「3 Perspectives on Personas: Lightweight, Qualitative, and Statistical」(ニールセン・ノーマン・グループ、2020年6月21日) https://www.nngroup.com/articles/persona-types/
原文: "as proto personas are not driven by research, they are often an inaccurate representation of your users and can be an echo chamber for the team's incorrect assumptions."
[31] Kim Flaherty, "Are Your Personas Outdated? Know When It's Right To Revise"(ニールセン・ノーマン・グループ, 2016年2月14日、156名調査) https://www.nngroup.com/articles/revising-personas/
[32] ヤコブ・ニールセン「Why You Only Need to Test with 5 Users」(ニールセン・ノーマン・グループ、2000年3月18日) https://www.nngroup.com/articles/why-you-only-need-to-test-with-5-users/
[33] Indi Young, Mental Models(Rosenfeld Media, 2008) https://indiyoung.com/the-cast-of-personas/
[34] Alan Cooper & Robert Reimann, About Face 2.0(2003)/ Alan Cooper, "Defending Personas" https://mralancooper.medium.com/defending-personas-2657fe26dd0f
[35] Paul Adams, "How we accidentally invented Job Stories"(Intercom) https://www.intercom.com/blog/accidentally-invented-job-stories/
[36] 英国政府デジタルサービス(GDS)「Assisted digital user personas」(2014年8月28日) https://assisteddigital.blog.gov.uk/2014/08/28/assisted-digital-user-personas/
原文: "In true GDS style we will continue to develop the personas as new data comes in and will blog about how they evolve over time."
英国国家統計局(ONS)、Ofcom、オックスフォード・インターネット研究所の統計に加え、イングランド全域の市民および支援団体・自治体の担当者への72件の聞き取りに基づく
注: このブログは更新を終了しており、現行のサービスマニュアルでは該当領域が別ページに移っている
[44] Steve Portigal, Interviewing Users(Rosenfeld Media) https://portigal.com/Books/interviewing-users-2/
[45] Rob Fitzpatrick, The Mom Test https://momtestbook.com/
数値の取り扱いについて(注記)
積雪 : 大朝の値は気象庁の1991〜2020年平年値[6] 。八幡(標高774m)の平年値は気象庁の観測地点(prec_no=67, block_no=1262)で直接確認した。年間降雪605cm・最深積雪120cm(1991〜2020年平年値)。なお第三者の記述にあった「平年5m超」は保守的な数値だった。
通勤時間 : 「千代田ICから広島市中心部まで車で40分」は現行ガイドブック(2016年)の記載[14] 。「千代田運動公園から広島駅まで55分・51.2km・高速1,210円」はNAVITIMEの経路検索結果(二次情報)。起点・終点・経路が異なるため両方を併記した。公的な計測値は見つかっていない。
昼夜間人口比率107.2%と通勤流動2,121人/1,151人 : 平成22年(2010年)国勢調査の値[1] 。最新値は未確認。
学校数 : 町の学校マップページは2022年5月更新で古い。本文には広島県教育委員会と報道で確認できた統廃合[12] [13] を反映したが、新庄中学校の現況は確定できていない。
神楽団数 : 51団体(町神楽協議会登録)/63団体(町プレスリリース)/約70団体(観光協会)で出典間の不一致がある[38] 。本文では数字を断定していない。
地域おこし協力隊の定住率 : 全国で同一市町村55.7%(4,477人/8,034人、2019〜2023年度任期終了者)、近隣自治体を含めて約68.9%。「69.8%」という数値を記載した資料もあるが原典に到達できなかったため採用していない。
パーソル調査 : 「Iターンの満足度が最も低い」という言い方は誤りである。最下位は多拠点居住型(3.37)で、Iターンは中位(3.39)[21] 。本文では「上位2つが地縁のある型」という表現に留めた。